日本の財政を読む
社会保障は、なぜ膨らみ続けるのか
年金・医療・介護・福祉からなる日本の社会保障給付費は、この50年でおよそ39倍に拡大し、
国の一般会計歳出の3割超を占めるまでになりました。急速な少子高齢化を背景に、
制度の中身と財源、そして持続可能性をめぐる論点を公表データに基づいて整理しました。
データ基準:2024年度実績・令和8年度(2026年度)当初予算 最終更新:2026年9月
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社会保障給付費(2024年度)
138.3兆円
1970年度比 約39倍
社会保障給付費の推移
社会保障給付費(年金・医療・福祉その他の合計)は1970年度の3.5兆円から一貫して増加を続け、
2024年度には138.3兆円に達しました。特に高齢化が加速した2000年代以降、増加ペースは高止まりしています。
社会保障給付費の推移(実績ベース)
単位:兆円
2020年度はコロナ禍による給付の上乗せとGDPの落ち込みが重なり、対国民所得比が一時的に上昇しました。
増加額の絶対水準は年々大きくなっている一方、伸び率そのものは経済成長や制度改正により変動しています。
給付費の内訳:何に使われているか
138.3兆円の内訳は、年金が最大の4割超を占め、医療が3割強、介護・子育て・生活保護・雇用対策などの
「福祉その他」が3割弱を占めています。高齢化に伴い、近年は医療・介護費の伸びが年金の伸びを上回る傾向にあります。
社会保障給付費の内訳(2024年度)
単位:億円(総額:138.3兆円)
国の予算全体における社会保障費の位置づけ
令和8年度の一般会計歳出総額は122兆3,000億円。社会保障関係費はその31.9%を占め、
国債費・地方交付税交付金等・防衛関係費などを上回る、歳出項目の中で最大の割合です。
令和8年度 一般会計歳出 主要経費別内訳
単位:億円(全体:122兆3,000億円)
社会保障関係費
その他の経費
ここでの「社会保障関係費」(39兆556億円)は国の一般会計から支出される公费負担分のみを指し、
保険料収入を含む「社会保障給付費」(138.3兆円)とは範囲が異なります。給付費全体のうち、
国の一般会計が直接負担しているのは3割弱にとどまります。
少子高齢化の進行
社会保障給付費が拡大し続けている最大の要因は、急速な高齢化です。65歳以上人口が総人口に占める割合(高齢化率)は
1970年の7.1%から2024年には29.3%まで上昇し、世界でも最高水準にあります。
高齢化率の推移
単位:%(65歳以上人口 / 総人口)
高齢者を支える現役世代(15〜64歳)の人数は、1970年の「約9.8人で1人」から近年は
「約2.0人で1人」まで縮小しました。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2040年頃には
「約1.5人で1人」を支える構図になるとされ、現役世代1人あたりの負担は今後も重くなる見通しです。
社会保障の財源はどこから来るのか
社会保障給付費は、主に「保険料」と「公费(税金)」の2つを財源としており、
高齢化による給付の増加分を、現役世代の保険料と国・地方の税収でどう分担するかが制度運営の核心です。
1
社会保険料
労使折半で負担する年金・医療・介護保険料など。財源の中心だが、少子化で現役世代の負担が重くなりやすい
2
公费負担(国)
国の一般会計から投入される税財源。令和8年度は39兆556億円で、歳出全体の最大項目
3
公费負担(地方)
都道府県・市町村が負担する分。国民健康保険や介護保険の一部などに充てられる
4
積立金の運用収益等
年金積立金(GPIF運用)の収益や資産収入。給付を下支えするが、市場変動の影響を受ける
国の公费負担分は税収だけでは賄いきれず、国債発行に頼っている部分があります。
その結果、現在の給付の一部が将来世代の負担(国債の償還)に先送りされている構造になっている点が、
財政健全化の議論でたびたび指摘されています。
社会保障をめぐる主な論点
立場によって評価が分かれるポイントを、事実関係を中心に整理しました。
- 現役世代の負担増:少子化で保険料を支える現役世代が減る一方、給付を受ける高齢者は増え続けており、現役世代1人あたりの保険料・税負担は年々重くなっています。
- 医療・介護費の伸び:高齢化に伴い、これまで給付の中心だった年金に加え、医療・介護給付の伸びが目立つようになっており、地域医療・介護人材の確保も課題です。
- 年金の実質価値:「マクロ経済スライド」により、少子高齢化の進行に応じて年金の伸びを物価・賃金上昇より抑える仕組みが導入されていますが、現役世代の受給時の給付水準低下への懸念があります。
- 全世代型社会保障改革:高齢者中心だった給付を子育て・現役世代にも拡充する「全世代型社会保障」への転換が進められていますが、財源をどう確保するかが議論の焦点です。
- 財源の持続可能性:公费負担分の一部が国債発行で賄われており、給付を維持するほど将来世代への負担の先送りが拡大するとの指摘があります。
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